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English Clock主任講師 山根克之 ロジカルリーディング力を鍛える⑦

English Clock主任講師 山根克之 ロジカルリーディング力を鍛える⑦

English Clockは“プロの映像翻訳者が持つ思考プロセス”を伝授し、
映像翻訳に必須の「英文解釈力」を着実にレベルアップさせることを目的としています。
 
2019年10月に新講座「ロジカルリーディング力強化コース」を開講。英文読解を高度な知的活動と捉え、英文を「何となく読める」レベルから脱却し、確実な根拠に基づいて理解した内容を自分の言葉で説明できるようになるまで考え抜くトレーニングを行います。英字紙の社説やドキュメンタリー番組のスクリプトなど、深い内容の素材を訳しながら、英文を貫く論理の見出し方、筋の通った訳文の作り方を学びます。
 
翻訳者は何よりもまず根拠のある訳文作りができないとなりません。それは具体的にどういうことなのか? ネルソン・マンデラ氏に関する英文をもとに、訳例をブラッシュアップしてみましょう。
◆English Clock主任講師 山根克之講師
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◆解釈力を高めて、戦えるフィールドを広げよう

 
以下の英文を読んで、最後の一文をそれぞれ自分なりに訳してみてください。
Nelson Mandela’s appeal is universal, but to say as much is not to suggest that he was other than human. I recently saw a documentary in which one of his former African National Congress colleagues said that ”Nelson was not without weaknesses and one of them was vanity”. It makes sense that a man who is proud and acutely conscious of how he looks would object vehemently to being looked down on as second-class.
 
例えば次のように訳したとしましょう。
 
訳文①:単語や構文の解釈が甘い
「プライドが高く、見た目を人一倍気にする人間は、二流の人間であると見下されることに猛反対するという意味でもある」
 
この文の解釈のポイントはmake senseやsecond-classという表現がなぜ使われているのかを理解することです。
まず、最後に出てくるsecond-classの解釈ですが、マンデラ氏が二流の人間とみなされていたということではありません。これはsecond-class citizen(第二級市民=社会的・政治的に恵まれない人)の略です。
make sense(道理にかなう)は2文目の内容を受けて、「マンデラ氏が実は虚栄心の強い人物だったのならthat以下の内容も理解できる」ということ。
①の訳ではsecond-classを「二流」と訳しているため、「この文脈でマンデラ氏が二流とはどういうことか?」という疑問を読み手に与えてしまいます。また、筆者がmake senseと表現した意図をとらえることができていないため、まとまりのない文になっています。
 
ここまでのポイントを整理すると①の訳文から②の訳文に修正することができます。
 
訳文②:表面的な解釈の正しさに留まっている
「プライドが高く、見た目を人一倍気にする人間が二級市民として見下されることに猛反対するのも理解できる」
 
とりあえず、間違ってはいないというレベルまで持ち直しました。ここからさらに深く考えて訳文を練っていきましょう。
先ほども述べた通り、make senseやsecond-classという表現が使われている理由をしっかりと考えることが大切です。マンデラ氏が人種差別と戦った人物であることを考えれば、「二級市民として見下される」とは「黒人は一段下の人間として扱われる」という意味だと解釈できます。筆者はマンデラ氏の欠点に関するエピソードを聞いた時、「なるほど、虚栄心が強いという一面も、人種差別と戦う原動力になっていたのか」と気づいたのでしょう。それがmake senseの意味です。筆者の中でマンデラ氏の性格と彼が残した功績がつながったのです。
 
この点を踏まえて②の訳文を修正したのが③の訳文です。
 
訳文③:原文を貫く理屈を見抜くことができている
「なるほどプライドが高く、見た目を人一倍気にする人間なら、人種を理由に見下されることに我慢がならなかったのも当然ではないか」
 
ステップを踏むにつれて訳文の印象が変わっていくのを感じられましたか? 特に日本語表現を練ったわけではありません。原文の理解度を深めるだけで、訳文の質が変わっていったのです。
 
日本語表現がなかなか上達しないと悩んでいる人は、本当に原文を理解できているか、自分自身と向き合ってみましょう。原文の意図や理屈を納得いくまで考えて、自分の言葉で説明できる力があれば、それだけでそれなりのレベルの訳文を作れるはずです。ロジカルリーディング力強化コースでは、テーマ別の演習を通じて、「読んだ内容を頭の中で整理し、自分の言葉で理屈を再構築して説明する力」を養います。これは翻訳者として1つの大きな武器になります。ぜひ、受講して身につけてください。
(Text by English Clock 主任講師 山根克之)
 

◆ロジカルリーディング力を鍛える アーカイブはこちら
https://www.jvta.net/tyo/logical-reading-archive/

 

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