English Clock主任講師 山根克之 ロジカルリーディング力を鍛える⑨
English Clockは“プロの映像翻訳者が持つ思考プロセス”を伝授し、
映像翻訳に必須の「英文解釈力」を着実にレベルアップさせることを目的としています。
2019年10月から新講座「ロジカルリーディング力強化コース」を開講。英文読解を高度な知的活動と捉え、英文を「何となく読める」レベルから脱却し、確実な根拠に基づいて理解した内容を自分の言葉で説明できるようになるまで考え抜くトレーニングを行います。英字紙の社説やドキュメンタリー番組のスクリプトなど、深い内容の素材を訳しながら、英文を貫く論理の見出し方、筋の通った訳文の作り方を学びます。
筋の通った訳文はどういうことなのか? 例文をみてみましょう。
<文字から絵を描こう>
ホテルの口コミサイトに書かれた苦情です。1文目をどのように訳すか考えてみてください。
Each night and early morning we were woken up to loud guys yelling and screaming from room next to us because sound came through adjoining locked door. I will never stay at this hotel again unless they take these doors out and make it a wall.
典型的な「英文の形に引きずられた」訳文は次のようなものになるでしょう。
「毎朝、毎晩、隣の部屋の鍵のかかったドアから男性の叫び声が聞こえてくるので、目が覚めてしまった」
「隣の部屋の鍵のかかったドアから声が聞こえる」とはどういう状況でしょうか? 皆さんはこの表現からホテルの部屋の構造を思い描けますか? 思い描けないとしたら、訳文が果たすべき役割を果たしていないということです。
この訳文をブラッシュアップするためのポイントは2つ。1つは上記の「隣の部屋の鍵のかかったドア(adjoining locked door)」とはどういうものなのか、はっきりさせること。もう1つはホテルに対する苦情なので、この客が気になった異常な点を分かりやすく伝えることです。
まず、adjoining locked doorの解釈ですが、これは2文目にヒントが出ています。「unless they take these doors out and make it a wall(そのドアを取り外して、壁にしてもらわない限り)」と書かれていますよね。つまり、このドアは隣り合う部屋同士をつなぐドアであることが分かります。そして、この隣の部屋とドアでつながっていることこそ、客が気になった点なのです。
この点に配慮して訳文を作り直してみます。
「隣の客室とはドアで一続きになっていた。鍵はかかっているものの、毎日朝と晩になると隣の宿泊客が騒ぐ声がそのドア越しにもれてきて眠れなかった。このようなドアを取り外して、客室をきちんと壁で仕切ってもらわない限り、このホテルをまた利用したいとは思わない」
翻訳者は英文を読んだ時に、そこに描かれた情景をありありと思い浮かべることができなければ、伝わる訳文を作成することができません。ロジカルリーディング力強化コースでは、「読んだ内容を頭の中で整理し、自分の言葉で理屈を再構築して説明する力」を養成するために様々な観点から演習を行います。
(Text by English Clock 主任講師 山根克之)
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