葛飾区の立石図書館で音声ガイド付き上映 図書館で人気のバリアフリーツールを紹介
3月17日、葛飾区の立石図書館で、音声ガイドつき映画会が行われ、JVTAバリアフリー講座の修了生、原ミユキさんが音声ガイドの制作とナレーションを担当しました。上映中に客席の後ろに座り、ライブでガイドを読むあげるスタイルです。上映作品は70年代の懐かしい商品や曲、ポスターなどが満載の『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』。今回はライブの音声ガイドに加え、バリアフリー字幕も付いていました。前回の、修了生の原ミユキさんにインタビュー(https://www.jvta.net/tyo/miyuki-hara-1/)につづき、今回は会場の様子や図書館のバリアフリーへの取り組みについて紹介します。
◆図書館はバリアフリー上映に最適な場 上映会には61名が参加
JVTAスタッフが実際に上映会場に足を運んでみて感じたのは、図書館はバリアフリー上映には最適な場だということです。この日は61名の方(うち盲導犬をお連れの方が1名、車いすの方が1人、白杖の方が7名)が参加し、会場には終始笑い声が起こっていました。視聴覚障害者の方だけでなく、見えにくい、聞こえにくい高齢者の皆さんが沢山参加されていたのが印象的でした。図書館のスタッフの方によると、知らない映画館に出かけるよりも馴染みがあり、ご近所や家族連れで参加する人も多いとのこと。一方で映写機の故障などで図書館での上映会は一般的に減る傾向にあり、都のバスを無料で利用できる高齢者が遠方から駆けつけるケースもあるそうです。
◆図書館では大活字本やマルチメディアデイジーが人気
上映前には同館の白井館長による、図書館内で利用できるバリアフリー関連のツールの紹介がありました。同館では大活字本や点字絵本などのコーナーがあり、ここ数年とても人気があるそうです。小説だけでなく、大きい文字の地図やエクセルやワードの使い方について大きな字で書かれた本など実用的な大活字本も用意されていました。
点字付きの絵本は一見普通の絵本のように見えますが実は点字が透明なシートに入れてあります。目の不自由なお母さんが点字を使って読み聞かせに使ってほしいという想いから、図書館で作成されています。
また、PCで本を読める「マルチメディアデイジー」というCD-ROMも所蔵の数が増えています。これは文字、音声、画像がパソコンで再生されるもので、音声で読み上げる文字がハイライトされたり、文字の大きさや読む速さなども自由に変更できたりするので、自分にあった読書ができると好評だそうです。
こうしたツールの存在を丁寧に告知できるという意味でも、バリアフリー上映会は貴重な場になっているとのこと。この日もバリアフリー字幕や音声ガイドを個人のスマホを使って楽しめるアプリUDCastが紹介されていましたが、その途中で実際に使っている視覚障害者の方が手を挙げて皆さんに機能を説明してくれる場面もあり、少しずつ浸透している様子が伺えました。
◆丁寧な事前解説も鑑賞をサポート
音声ガイド付き上映では作品の事前解説も恒例です。原さんが上映作品『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』の簡単なあらすじと主要なキャスト、ちょい役で大物俳優が多数出てくるなどお楽しみポイントを紹介することで、より本編を楽しめるように工夫されていました。ちなみに、主役のママチャリ(市原隼人)の母を演じるのは石野真子さん。石野さんのヒット曲も作中で流れるので、これを事前に知らせておく必要があるのです。今回は他にも随所に挟みこまれる短い小ネタカットが多くて、ガイドに盛り込むのが大変だったそう。1979年の物語なのですが、当時人気だったアグネス・ラムさんのポスターや、松坂慶子さんのヒット曲「愛の水中花」のジャケ写、「赤いきつね」の武田鉄矢さんのCMなど懐かしい映像が一瞬だけ出てきます。これは音声ガイド制作には悩ましい情報です。「いきなり、そういうワードが出てきたら、『何だろう?』と考えこまずに『懐かしいな』とさらっと流してくださいね」と、混乱しないように原さんが事前に的確なアドバイスをしていたのが印象的でした。
音声ガイドやバリアフリー字幕は、すべての人が楽しめるツールです。特に映像翻訳を学ぶ皆さんにとっては、情報の取捨選択や作品解釈、言葉選びなど学べる要素が満載。調べものなどで地元の図書館に行く際は、ぜひ、バリアフリーのコーナーも覗いてみてください。JVTAはこれからもさらなる映像のバリアフリー化をサポートしていきます。
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