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ついに幕開け!他では聞けないミュージカル訳詞の世界

ついに幕開け!他では聞けないミュージカル訳詞の世界

映像翻訳者は映画やドラマだけではなく、海外で作られたミュージカルの翻訳を手掛けることがあります。「映像」ではありませんが、セリフがあるのはミュージカルの舞台も同じ。1つ異なるのは歌詞の翻訳で、字幕などとは異なり、実際に役者が歌うことを想定し、メロディに合った言葉を選んでいきます。ミュージカルの訳詞には「訳す」という作業以外に必要な知識や技術があるのです。

 
今回「JVTAサマー・スクール2020」ではJVTAの修了生で、役者としての経験があり、ミュージカル作品の翻訳も複数手掛ける長島祥講師がミュージカル訳詞の特徴やテクニックなどを解説してくれました。その一部をご紹介します。

 
「訳詞のポイント 第1幕」
~訳詞を極めるなら、まずは作詞を学ぶこと~

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ミュージカルの訳詞をやりたいという方は、作詞の勉強をしてください。お勧めなのは好きな日本人アーティストの歌詞を分析することです。歌詞はアクセントやイントネーションなどを考慮して言葉を選ばないといけません。しかも字幕よりも制限が多いため、接続詞や助詞などをカットすることが多いのです。好きな曲を聞きながら、歌詞独特の文法に注目するとその法則が見えてきます。(長島講師)

 
「訳詞のポイント 第2幕」
~長島流、訳詞作業とは?~

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まずは、デモ音源を聞き込んで、曲の構成や流れ、ブレスの位置などを把握することが大切です。次に音の数をカウントする字数表を作っていきます。例えば「ぶんぶんぶん」の音は3つ、「はちがとぶ」で5つという具合です。これは音と同じ数の日本語を当てはめる時にとても役立ちます。あとは最初に全訳をして、必要な情報を落とさないように注意しながら、パズルのように言葉を当てはめていきます。(長島講師)

 
「訳詞のポイント 第3幕」
~稽古場での修正に対応できる瞬発力が大切~

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訳詞において翻訳者の仕事は、納品したら終わりではありません。舞台の稽古で役者の動きが加わることで、演出が変わることがあります。それに伴って歌詞も変更することがあるため、翻訳者も稽古場に入ります。その時に必要なのは、すぐに対応できる瞬発力です。(長島講師)

 
後半は、あるミュージカル曲の舞台版と映画版(吹き替え)の歌詞を比べ、その違いを検証しました。同じ曲でも工夫された言葉選びやリップシンクの技術で違った訳詞になっていることに参加者の皆さんも驚いていました。

 
最後に、長島講師は「訳詞に正解はありません。大切なのは、作詞家や演出家の意図を組み、映画版なのか舞台版なのかを理解して訳せるかどうかです」と締めくくりました。
今回、参加者の中にはミュージカルファンも多く、役者としても翻訳者としても経験がある長島講師の貴重な話に誰もが聞き入っていました。幕間もない40分という短い時間だったこともあり、参加者からは「シリーズ化してほしい」という声もいただきました。いつか「再上演」もあるかもしれません。

 
長島 祥/映像翻訳者、JVTA英日映像翻訳科講師
長島祥さん
ミュージカル俳優として活躍後、JVTAに入学し、英日映像翻訳を学ぶ。トライアル合格後は、吹き替え(ボイスオーバー)翻訳のスペシャリストとして信頼される翻訳者のひとりで、自らが学んだJVTAの英日映像翻訳科の講師としても活躍中。舞台の仕事にはこれからも関わっていきたいと考えている。
 
 
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