『サンドウィッチマンライブツアー2018』今年もJVTAがバリアフリー字幕でサポートしました!
皆さんは、毎年恒例のサンドウィッチマンのお笑いライブDVDにバリアフリー字幕が付いていることをご存じですか?
実はこの字幕、JVTAが毎年制作をしています。今年3月発売の『サンドウィッチマンライブツアー2018』で6年連続になり、バリアフリー講座の修了生が7人が担当しました。斎藤のぞみさんもその一人。2017年版では特典映像、2018版では本編と2年連続で関わった斎藤さんに、バリアフリー字幕へ想いと、この作品の魅力や工夫したポイントなどを聞いてみました。
JVTA 斎藤さんがバリアフリー字幕を知ったきっかけを教えてください。
斎藤のぞみさん(以下 斎藤さん) きっかけは、バリアフリー字幕が付いた小さな子ども向けのテレビ番組を見たことでした。“楽しむ”ことを気兼ねなくサポートしてもらえるツールがあるということにある種の羨ましさを感じたのだと思います。というのも、私は足に障害があり、移動中に会話を楽しむことが難しいため、「何気ないことをみんなと一緒に楽しめたら…」という思いがあったからです。以前から“聞く”ということに制約のある方たちも映像を楽しむ際に同じような思いを抱えているだろうと想像していました。そうした思いに応えることができたら、どれほどうれしいかと思ったのです。また誰もが自然に使えるサポートの見本が作れれば、障害の有無による互いへの不安が小さくできるように思えて、ワクワクしました。そのための方法が、私にとってはバリアフリー字幕の制作でした。
※斎藤のぞみさん
JVTA 字幕ライターとしてデビューし、実際に字幕を作る側になってみていかがですか?
斎藤さん 作り手が意図した構成や、“ここを楽しんでほしい”と思っていることを反映した字幕作りを目指しています。ただ実際には、チェックバックを見て、適切なセリフの区切り方、音情報とセリフの関係など、まだまだだなと感じることばかりです。
しかし難しさに悩むほどに、一視聴者として見ているだけでは分からなかったセリフや映像の妙に気付かされています。また、自分では見ることのなかった様々な作品に出会い、面白さを発見できるのも、この仕事の魅力です。これからもまずは自分が作品の面白さを実感して、字幕を見ていただく方にそれをお伝えできるよう、実力をつけていきたいと思います。
JVTA 斎藤さんは『サンドウィッチマンライブツアー』のDVDを2年連続で担当されました。お笑いの字幕を作る上で意識していることはありますか?
斎藤さん 笑いのポイントを生かしたり、ネタバレを防いだりするため、ほかのジャンル以上に、話の展開や構成を理解することを心がけています。笑いのポイントは、会話の内容、表情や効果音などさまざまなので、その特色を見極めた字幕にできればと考えています。またこのDVDのように、会場のリアクションとして観客の笑い声も字幕に取り入れて、臨場感を重視するのもドラマなどにはない面白さだと思います。
※『サンドウィッチマンライブツアー2018』より
JVTA 具体的に何か例があれば教えてください。
斎藤さん 2017年版は本編ではなく特典映像で、ロンドン特別公演の箇所を担当させていただきました。このパートは、台本のないカジュアルな会話や屋外のロケなど、お笑いのネタというよりもバラエティー番組のような印象でした。そのため、ノイズの多い中でのセリフの聞き取りや、たくさんの話者がいる中でのセリフの取捨選択に苦労しました。制作ルールの面では、映像に元々付いているテロップと字幕が重ならないよう、文字数などにも注意が必要でした。
※『サンドウィッチマンライブツアー2018』より
また、お2人への密着取材の場面では、会話の中に個人的に親しい方の名前なども多く、キーワードを調べるのに時間がかかりました。その分、ネタを見ているだけでは分からない素顔を知って制作できたのはよかったと思います。私自身がお2人に親しみを持って楽しみながら制作したので、字幕でもお2人の魅力をお伝えできれば嬉しいです。
JVTA 確かに台本がないプライベートな楽屋話だと、調べものが大変ですね。今年は本編を担当されましたが、特典映像との違いはありましたか?
斎藤さん 今年は本編映像でコント「アナウンス学院」や漫才「謝罪」を担当しました。ネタの場合は台本に基づいているので、話の展開やその意図を正確に反映できるよう心がけました。
※『サンドウィッチマンライブツアー2018』より
具体的にどのネタでも意識したのは、「どこからどこまでを1つの字幕にするか」ということです。バリアフリー用の字幕には、読みやすさの点から「1秒に10文字」という目安がありますが、早口なセリフだとオーバーしてしまいます。また相手のボケに即座にツッコむなど、短時間に2人のセリフがかぶることもあります。そのような場面で、自然で分かりやすく、見やすさを保ったセリフの区切り方を決めるのに、試行錯誤を重ねました。
JVTA 特に苦労した点はありますか?
斎藤さん 独特な口調が笑いのポイントになる場面があり、それをどのように文字化するかも悩みどころでした。音の高低やある種の節回し、微妙な間などを、文字だけで表すにはどうしても限界があります。そのため、バリアフリー字幕では「?」「!」「…」といった記号を多用するのも特徴の一つです。今回もいろいろと冒険もしながら、できるかぎり再現していきました。
※『サンドウィッチマンライブツアー2018』より
JVTA 最後に視聴者の方へメッセージをお願いします。
ああでもない、こうでもないと作業が進まないことも多かったのですが、何度見ても笑ってしまうお2人のネタの面白さに、元気をもらって制作できていたように思います。バリアフリー字幕がつくことでより多くの皆さんにこの楽しさを伝えられたら嬉しいです。また映像翻訳を学ぶ皆さんなら、翻訳字幕とは一味違うバリアフリー字幕ならではの面白さを知って頂けるはずです。どうぞご覧ください。
★『サンドウィッチマンライブツアー2018』
2019年3月22日発売 ※全字幕対応
ダイジェスト動画をお楽しみください!
★サンドウィッチマンのコントに英語字幕 JVTA修了生が担当しました。
https://www.jvta.net/tyo/sandwich%EF%BD%8Dan-english/
★斎藤さんが修了したバリアフリー講座はこちら
http://www.jvtacademy.com/chair/lesson3.php