SKIPシティ国際Dシネマ映画祭×JVTA 10年に及ぶ英語字幕PROゼミがもたらしたもの
映像クリエイターの登竜門として知られる「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」が今年も7月13日(土)に開幕する。この映画祭は、“新たな才能を発掘し、育てる映画祭へ”をモットーに、これまで白石和彌監督(『孤狼の血』『碁盤斬り』)、中野量太監督(『湯を沸かすほどの熱い愛』『浅田家!』)、石川慶監督(『愚行録』『ある男』)、上田慎一郎監督(『カメラを止めるな!』『スペシャルアクターズ』)など国内外の多くのクリエイターを生み出してきた。
JVTAは、主にこの映画祭の国内コンペティションにノミネートされた作品の英語字幕を手がけている。特筆すべきは、2013年から約10年、この映画祭とタッグを組んで毎年「英語字幕PROゼミ」を継続的に開催していることだ。「英語字幕PROゼミ」では、翻訳者がゼミ形式で字幕を制作し、プロの映像翻訳ディレクターのフィードバッグを受けて、最終的な字幕を作成する。アメリカ出身のジェシー・ナスディレクターは、このゼミの開始当時から指導にあたってきた。JVTAで多くの日英翻訳案件に携わり、日本人監督が海外の映画祭に出品する際のサポートなどの経験も豊富だ。自身も『不気味なものの肌に触れる』(濱口竜介監督)の英語字幕を手がけたほか、『笑顔の向こうに』(榎本二郎監督)が第16回モナコ国際映画祭で最優秀作品賞を受賞した(関連記事はこちら)際の英語字幕のチェックや出品に関するサポート(現地とのメール対応や出品の手続き)などを行ってきた。
「『英語字幕PROゼミ』の大きな特徴は2~4人のチームで翻訳し、出来上がった字幕が、同映画祭で上映されることにあります。ゼミの中では、細かい表現について徹底的に考えていきます。決して間違いではないけれども、ネイティブが見ると不自然に思えるワードチョイスや、話者の心情を深くくみ取ったニュアンスが反映されていないと思う語句などについて、より的確に伝えるためのヒントを考察します。とはいえ、視聴者はネイティブだけではありませんし、英語字幕は今後、これを基に多言語に翻訳される可能性もありますので、どんな人が見ても分かる英語にする配慮も必要です。実際、私たちが多言語の作品を日本語に訳す時もオリジナルの原語ではなく、英語字幕から訳すケースが多いという現状があります。指導側の立場として大切にしているのは、こちらからすぐに代案を出すのではなく、2度にわたる細かいフィードバックを受けてチーム内でリライトすること。実際の翻訳の仕事では納期までの時間も短く、学びながら時間をかけて自らブラッシュアップできるケースは稀であり、翻訳者にとっても大きな学びになります。」(ジェシー・ナス ディレクター)
ジェシーディレクターによると、新人翻訳者にとって特に難しいのは自然な日常会話の流れを作ることと作品の解釈(シーンの意味や作品のテーマ)だという。さらにセリフの量や全体の内容など考慮して作品を選んでいる。翻訳者にとっては、出来上がった英語字幕を映画祭のスクリーンで観られる(字幕制作者のクレジットを表示)のも嬉しいポイントだ。
「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭では上映後にトークショーが行われ、監督や出演者が登壇することもあります。翻訳者が会場に足を運べば、直接、制作者と交流できるチェンスがあるのも映画祭ならではですし、これは日本の作品に携わる日英翻訳ならではの醍醐味とも言えます。」(ジェシー・ナス ディレクター)
「英語字幕PROゼミ」ではこれまで、『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督、『湯を沸かすほどの熱い愛』の中野量太監督など今注目を集める監督たちが過去に手がけた短編映画の英語字幕も手がけてきた。翻訳者にとってまさに未来のクリエイターの傑作に出合える素晴らしい機会となっている。一方、初期のPROゼミに当時新人として参加した翻訳者たちも経験を重ね、今では講師やディレクターとして新人翻訳者の指導にあたったり、ヴェネチア国際映画祭 銀獅子賞(監督賞)を受賞した『スパイの妻』(黒沢清監督)の英語字幕(関連記事はこちら)を手がけたりするなど、この10年で大きな実績を残している。学びと実績を兼ね備えたこのゼミに参加したいという希望者は多く、今では募集後すぐに満席になる人気を集める講座の一つになった。国際映画祭出品で英語字幕がつくことは、映画制作側にも海外を視野に入れる大きなチャンスとなる。ぜひ、英語字幕にも注目しながら鑑賞してほしい。
◆SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2024(第21回)
《スクリーン上映》2024年7月13日(土)~ 7月21日(日)
《オンライン配信》2024年7月20日(土)10:00 ~ 7月24日(水)23:00
公式サイト:https://www.skipcity-dcf.jp/
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