【SSFF & ASIA 2019】アカデミー賞受賞の衝撃作『スキン』が日本初公開!
現在開催中のショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2019 (SSFF & ASIA 2019)は短編映画だけを集めた映画祭です。今年21年目を迎えるこの映画祭を、JVTAは毎年字幕でサポート、約200本上映作品のほとんどの字幕を修了生が担当しています。
今年の上映作品の中で特に注目を集めている1本があります。『スキン』は、スーパーマーケットで出会った黒人男性と白人の少年との微笑ましい交流が引き起こす悲劇を、人種差別や銃社会などの闇を絡めて描いた衝撃作。第91回(2019)米国アカデミー賞で短編実写部門受賞し、アメリカ国内のみならず、フランス、スペイン、オーストラリアなどの映画祭でも高い評価を受けています。
『スキン』の日本語字幕翻訳を手がけた修了生の依藤康延さんに話を聞きました。
JVTA この作品を手がけた感想とみどころを教えてください。
※『スキン』Guy Nattiv監督
依藤康延さん(以下、依藤さん)『スキン』を担当させていただき、ありがとうございました。アカデミー賞受賞作品ということで、若干緊張しましたが、全体的に楽しく作業をさせていただきました。映画のストーリーや描写はかなり過激ですが、アメリカの暗部をえぐる、非常にリアルな作品だと思います。その中で、主人公トロイが持つ8歳の男の子らしい純粋さ、無邪気さが、個人的にとても印象的でした。
JVTA 訳す上で苦労した点や工夫した点はありましたか?
依藤さん 登場人物それぞれの個性を生かしつつ、セリフに余計な色をつけないよう、バランスに気をつけました。苦労した点は、尺が短く、制限文字数が少ないわりに一筋縄ではいかないセリフが多かったことです。
例えば、親子で出かけたスーパーマーケットでの一場面に「Want to race?」というセリフがありました。これは母がカートの前部に向い合わせに乗ったトロイにかける言葉で、この後、ふざけながらも鬼のような形相で母が勢いよくカートを押し始めます。いわゆる並んで走ることを連想するような「競争」とは言えないraceだったので、どう訳すかギリギリまで悩みました。最終的には「大急ぎで走る、疾走する」という意味に近いと判断し、制限文字数が4文字だったため、映像に合わせて意訳しました。
JVTA 字幕は映像と一緒に見て違和感がないことが大切で、ときにはこういった工夫も必要ですよね。短編映画やショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA 2019)の魅力を教えてください。
依藤さん 長編映画に比べて時間的に物足りなさを感じることもありますが、短編だからこそ簡潔で伝わりやすいものもあると思います。
※今年の5月29日に行われたオープニングセレモニーの様子
SSFF & ASIA 2019では、国や人種、年代や性別を越えて、様々なジャンルやテーマを扱われているところが何より素晴らしいです。また、若手や女性のフィルムメイカーのサポートなどにも積極的に取り組まれており、新しい何かを生み出す磁場のような空気にあふれているところも魅力ですね。
※オープニングセレモニーにて 2019年から本格的に始動したLadies for Cinema Projectの プロジェクト・プレゼンター 木村佳乃さん
JVTA 今年は初日に渋谷で行われたオープニングセレモニーにも参加されましたね。
依藤さん 音楽のライブなどにもよく行くのですが、現場に足を運ぶことは大事だと常々思っています。今回参加させていただいて、私もフェスティバルに関わっているという実感がより一層湧きました。また、普段お世話になっているディレクターや翻訳者の方々ともお会いできて大変光栄でした。
※オープニングセレモニーの会場での1枚 右から2番目が依藤さん
JVTA 上映時の反響が楽しみですね。ありがとうございました。
『スキン』の詳細はこちら
https://www.shortshorts.org/2019/prg/ja/3401
ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2019 (SSFF & ASIA 2019)
開催期間:5月29日(水)~6月16日(日)
上映会場:表参道ヒルズ スペース オー、アンダーズ 東京 Andaz Studio、iTSCOM STUDIO & HALL 二子玉川ライズ、シダックスカルチャーホール ほか
※開催期間は各会場によって異なります
https://www.shortshorts.org/2019/
※「私も映画に字幕を付けてみたい!」という方は個別相談へ
https://www.jvta.net/tyo/kobetsu/
※JVTAは多くの映画祭の字幕を担当しています。翻訳のご依頼はこちらへ
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