【サマスク2023レポート】“好き”を仕事にするために ~学生が映像翻訳を学ぶメリットとは?~
映像翻訳者の多くは“好き”を仕事にした人たちだ。しかし単に“好き”を極めるだけでは仕事につながらない。自らの職能を武器に変えるのは、人との関わりを通して生まれる社会性である。そうした社会性は、必ずしも実際の仕事を通じてだけでなく、専門性を身に付ける過程でも習得することができる。その実例を紹介、体感してもらうため、日本映像翻訳アカデミー(JVTA)はサマースクールセミナー「『英語が好き!ドラマや映画が好き!』を”就活力”に変える映像翻訳の話」を開催した。
セミナーに登壇したのは、これまで教育機関やJVTAのプロジェクトで学生たちの指導に当たってきた桜井徹二講師。今回も学生を中心に多くの参加者が集まった。セミナーのテーマは、映像翻訳を学ぶことで養われる力と、経済産業省が提唱する「社会人基礎力」の共通点だ。映像翻訳者は字幕を作る上で、語彙力や知識教養をおのずと蓄積しなければならない。その上、短納期の案件に関しては、複数の翻訳者で1本の作品を担当することが多々ある。最終的に作品の完成度を左右するのは、1つの作品を共に手掛ける翻訳者仲間とのチームプレーなのだ。そこでセミナーでは参加者を5~6名ずつのグループに分け、チーム翻訳を体験してもらった。限られた時間で訳を考え、各自のアイデアをまとめ、映画の場面を完成させる。各自の知識や経験、感性からさまざまな意見が出て、一人で字幕を作る過程では味わえない面白さも難しさもある。
「初対面の人たちと協力しながら字幕を作り、講師からフィードバックをもらえたことで、映像翻訳という職業のイメージが具体的になりました」
「字幕作りに必要なのは英語力だけではない、TOEICの点数よりも“挑戦する心”が大事であると講師から聞けたことは励みになりました」(セミナー参加者より)
専門性と社会性を同時に身に付ける職業訓練という一面は、映像翻訳の特長である。映像業界に就職したい、いつか翻訳者として独立したい、または複業にしたいなど、自分の“好き”を仕事に変える可能性が、映像翻訳の世界には広がっている。
By Yukiko Takata
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