【サマスク2023レポート】“言葉で遊ぶ”プロの技 ~ゲーム翻訳の裏側に迫る~
2022年、ゲームメディアが主催する「The Game Award」で、日本のRPGゲームが最優秀作品にあたる「Game of the Year (GOTY)」を受賞した。海外メーカーに後れを取った時代もあったが、日本製ゲームは再び人気を取り戻しつつある。そしてこうした評価と実績は、日英ゲーム翻訳者の需要も高めている。
2023年9月、JVTAはサマースクールセミナーとして「日英ゲーム翻訳者に聞く!Part2~あのキャラ名、技名、どう訳す?~」を開催した。2月に好評を博したセミナーに続き、今回も日英ゲーム翻訳者であるデビン・ニール氏が登壇。同氏が使用しているソフトウェア「memoQ」の画面を共有し、参加者に仕事の様子を実践してみせた。
ゲーム翻訳におけるポイントの1つが、固有名詞の訳出だ。字数制限など翻訳ルールのもと、ストーリーや世界観にマッチした英訳を付ける。その一例が、あるゲームに登場する「ポム」というキャラクターだ。英語版もそのまま“Pomme”とできるが、シンプルな名詞こそプロのこだわりが光る。ニール氏の翻訳チームは「ポム」の役柄に注目し、「登場人物たちを見守るおばあさん」「Pommeはフランス語でリンゴの意味」という観点から「Granny Smith 」と名付けた。ただ訳すのではなく遊び心のあるひと工夫に、参加者たちも関心を寄せた。
ゲーム翻訳では、10~20名の大きなチームで翻訳を進める。原語のニュアンスをどう英訳に反映するか、もしくはあえて原語をそのまま使うのかなど議論していくが、良い作品に仕上げる極意についてニール氏はこう語った。
「最終的に重要なのは、開発者とファンが喜ぶようなゲームに仕上げることです。双方の気持ちを理解するという意味でも、翻訳者自身が日ごろからゲームに親しみ、知識を蓄えておくことも仕事のひとつです」
日本製ゲームは、その綿密な特徴から「職人的」とも言われている。ストーリーやキャラクターに込められた職人技が海外で評価される背景には、言葉とゲームに精通した翻訳者の巧みな技があった。
(By Yukiko Takata)
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