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マーシャル諸島で出会った戦争の記憶を伝えたい 監督自らがバリアフリー字幕と音声ガイド制作に参加し上映

マーシャル諸島で出会った戦争の記憶を伝えたい  監督自らがバリアフリー字幕と音声ガイド制作に参加し上映

ユニバーサルシアター、CINEMA Chupki TABATAで12月、JVTAの修了生の大川史織さんが監督、藤岡みなみさんがプロデュースを手がけたドキュメンタリー映画『keememej』と『タリナイ』が上映される。この作品の舞台はかつてアジア・太平洋戦争中に日本の委任統治下にあったマーシャル諸島共和国だ。この地で日本兵として命を落とした父の足跡を辿るため現地を訪れた男性と島の人々の交流をとらえた連作となっている。バリアフリー字幕と音声ガイド制作は大川さんが自ら手がけたほか、『keememej』の字幕監修にはJVTAの渡辺三奈ディレクターが参加し、上映会場のトークショーにも登壇する予定だ。監督である大川史織さんに話を聞いた。

『タリナイ』©︎春眠舎

「JVTAのバリアフリー字幕講座(現・メディアアクセシビリティ科)を受講しました。きっかけは、2018年に公開したドキュメンタリー映画『タリナイ』を制作し、自分たちで配給したことで、どんな人でも映画を楽しめる環境で作品を届けたいと思ったからです。プロデューサーの藤岡みなみさんが音声ガイド、監督の私が字幕講座を学びました。11月7日から12月14日までCINEMA Chupki TABATAで開催する「世界を届ける映画祭」では、チュプキさんのチームにご協力いただき、両作品の音声ガイドと字幕を一緒に作りました。」

(大川史織さん)

『keememej』©︎春眠舎

大川さんは大学卒業後、マーシャル諸島に移住。日系企業で働きながら、現地の人々との交流の中で、今も現地に残る砲台や火薬庫といった、戦争の記憶と向き合った経験を持つ。“keememej”とは、マーシャル語で“憶えている”という意味だ。大川さんは、現地の人々が今も日本語で歌う歌のもてなしを受け、衝撃を受けたという。帰国後は、『マーシャル、父の戦場 ある日本兵の日記をめぐる歴史実践』(みずき書林、2018年)や、『なぜ戦争をえがくのか 戦争を知らない表現者たちの歴史実践』(同、2021年)を執筆するなど、日本ではあまり知られていない戦争の記憶を伝えてきた。さらに今年「世界を配給する人びと 遠いところの声を聴く」(アーヤ藍 編著  春眠舎)に大川さんのインタビューが掲載された。今回の上映は、この書籍の刊行を記念した<世界をとどける映画祭>の一環であり、インタビューが掲載された5人に関する作品全12作品を観ることができる企画となっている。

今も島に残る戦跡『keememej』©︎春眠舎
今も島に残る戦跡『keememej』©︎春眠舎

「字幕講座の同期に、JVTAで現在講師を務めていらっしゃる渡辺三奈さんがいらっしゃったご縁から、『keememej』の字幕監修は、渡辺さんにお受けいただくことが叶いました。

渡辺さんから、作品の背景、成り立ちを字幕の表記で豊かに表現できることを学びました。『今回は通常バリアフリー字幕では基本となる話者名の表記よりも、言語の区別を表示することで、マーシャル語の成り立ちや歴史を伝えられるのではないか。』『会話はなるべく細かく、音どおり表記することで、思いが溢れている様子や、言葉を探しながら話しているたどたどしさを伝えたい。』『マーシャル語の歌の歌詞も翻訳表記できたら、歌詞に込められたマーシャルの人たちの思いも届けられるのでは…』と、渡辺さんと対話を重ねながら字幕を制作しました。その結果、通常の講義で教えている定義とは違う部分も多いそうですが、制作者である私の想いを伝えるための実験的な試みとなりました。(詳しい話は12月2日の上映後のトークにて明かされる予定です)。正解がない字幕制作の奥深さを感じるとともに、自作と出会いなおせた時間でした。完成した字幕と音声ガイド、ぜひシアターでお楽しみいただけたらうれしいです。」(大川さん)

映画制作者自ら制作したバリアフリー字幕にも注目しながら、ご覧ください。

<世界をとどける映画祭>

「世界を配給する人びと」(アーヤ藍 編著/春眠舎 刊)

刊行記念・【11月17日〜12月14日】特別上映月間

上映スケジュールや舞台挨拶の詳細・お申し込みはこちら

※座席数の少ない劇場なので、ご来場の際はご鑑賞の予約をおすすめします。

※日本映像翻訳アカデミー メディア・アクセシビリティ科

●字幕ガイドコース

●音声ガイドコース

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