【東京国際映画祭が10月28日開幕】映像翻訳のスキルを生かし、2カ国語プログラム翻訳を担当
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10月28日(月)、第37回東京国際映画祭(TIFF)が開幕する。TIFFは、1985年に日本ではじめて大規模な映画の祭典として誕生。才能溢れる新人監督から熟練の監督の作品まで、世界中から厳選された映画が集結し、毎年メディアでも大きく報道される人気のイベントだ。JVTAは今年も公式プログラムの英訳やデイリーペーパーの翻訳などを担当し、修了生が活躍するほか、プログラミンググループのスタッフとして、修了生の今井祥子さんが運営に携わっている。
日本を代表する国際映画祭とあって公式プログラムと会場で配布される映画祭ガイドは、2カ国語となっており、昨今JVTAは日本語の情報を英語にする作業を担当している。紙面で均等に決められたスペースで各作品の魅力を紹介するのは至難の業だが、字幕翻訳で鍛えたスキルが活かせる作業でもある。例えば公式プログラムを英訳する内容は、映画祭関係者挨拶文(全訳)や、作品紹介文。作品の概要は約600字、監督のプロフィールは400字まで(共に20 字程度までオーバー可)と細かい字数制限が定められており、字幕翻訳とも親和性が高い。
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今回、多くの翻訳を手掛けた修了生、Y.M.さんは、複数の言語(英日、韓日、日英)で主に動画配信の映画やドラマの字幕翻訳に携わっている。映像翻訳とプログラム翻訳の共通点や相違点についてこう話す。
「今回のように数多くの固有名詞を扱う仕事では、表記や事実関係の裏取りと統一が欠かせません。また、作品の内容について把握することも大切です。映像翻訳ではそうしたリサーチが必須スキルとされ、スクールでもその手法を学びます。今回はそれが役に立ったと感じました。文字数制限のある紹介文を訳す場合、情報の取捨選択が必要になってきます。文書の翻訳では映像の助けを借りられないので、省ける情報が少なくなるのがつらいです。」(Y.M.さん)
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漢字を使う日本語の文章を英訳する場合、固有名詞だけで考えても確実に字数が増えてしまうので、情報の取捨選択は必須だ。また、監督のプロフィールには過去作品や受賞歴なども含まれることが多く、各作品の英語タイトルや事実確認なども必要となる。短い文章でも実はリサーチが必須となるポイントが数多くちりばめられているのだ。こうした親和性ゆえに、映像翻訳者は映像以外の分野でもスキルを生かして活躍している。特に日英映像翻訳者は翻訳のジャンルも多様で、JVTAの授業でも「映画祭カタログ」「マンガ翻訳」「アニメ台本翻訳」「ゲーム翻訳」「企業VP」など実務を想定した実践的な授業を行っている。映画やドラマだけでなく、さまざまな日本のカルチャーが世界で人気を集める今、日英映像翻訳者の仕事の幅も拡がっている。
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©2024 PARAMOUNT PICTURES.
東京国際映画祭でも会期中に各会場で無料配布されるデイリーペーパー「TIFF Times」(インタビューやコラム、レポートなどの読みもの記事を掲載)の一部もJVTAの修了生が手がけていく予定だ。映画祭の上映作品を掲載した映画祭ガイドは、下記からダウンロードできる。
https://2024.tiff-jp.net/news/ja/?p=64432
※ポスタービジュアルの監修はコシノジュンコ氏。映画祭のナビゲーターは俳優の菊地凛子さんが務める。
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東京国際映画祭は、10月28日(月)に開幕する。今年のコンペティション部門国際審査委員長を務めるのは、『花様年華』(ウォン・カーウァイ監督、2000年)、『HERO』(チャン・イーモウ監督、2002年)、『インファナル・アフェア』シリーズ(アンドリュー・ラウ監督、2002~2003年)などで知られる俳優のトニー・レオン氏。香港を代表する俳優として2023年に第80回ヴェネチア国際映画祭で栄誉金獅子賞を受賞している。
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オープニング作品は、白石和彌監督の最新作『十一人の賊軍』。クロージング作品は主演のキアラ・マストロヤンニが母カトリーヌ・ドヌーヴと共演し父マルチェロ・マストロヤンニをオマージュした『マルチェロ・ミオ』を上映。そして同映画祭初の企画となる“センターピース”として、リドリー・スコット監督の『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』の上映が急遽決定した。2000年のラッセル・クロウ主演の傑作『グラディエーター』の伝説を継ぐ新たな物語が誕生、アジアン・プレミアとなる。
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© 2024 L.F.P. – Les Films Pelléas / Bibi Film TV / Lucky Red / France 2 Cinéma / LDRP II / Super 8 Production / TSF
その他、今年は東京都との連携で「ウィメンズ・エンパワーメント部門」という新部門を設立し、女性監督による作品を特集するほか、女性監督が語り合う「シンポジウム:女性監督は歩き続ける」が開催される。
今世界が注目する映画関係者が集結する華やかなレッドカーペッドにも注目したい。上映会場には監督や出演者が登壇する回も多いのでお見逃しなく。
◆第37回東京国際映画祭
2024年10月28日(月)~11月6日(水)[10日間]
シネスイッチ銀座、丸ノ内TOEI(中央区)、角川シネマ有楽町、TOHOシネマズ シャンテ、TOHOシネマズ 日比谷、ヒューマントラストシネマ有楽町、丸の内ピカデリー、有楽町よみうりホール、東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場、LEXUS MEETS…、東京宝塚劇場(千代田区)ほか、都内の各劇場及び施設・ホールを使用