「ヨコハマトリエンナーレ」現代アートの国際展でも修了生が活躍
7月17日(金)、ヨコハマトリエンナーレ2020「AFTERGLOW―光の破片をつかまえる」が開幕します。ヨコハマトリエンナーレは3年に1度横浜市で開催される現代アートの国際展。2001年の開始以来、草間彌生氏をはじめ、荒木経惟氏など個性あふれるアーティストが国内外から出展し、横浜市内のさまざまな場所にアート作品が設置されています。JVTAは今年、この祭典に出品されたナイーム・モハイエメン氏の映像作品 《JOLE DOBE NA (Do not Drown in Water)》, 2020の日本語字幕を担当、修了生の内田貴子さんが手がけました。いわゆる映画やドラマとは違うアート作品の字幕づくりについて、内田さんに聞いてみました。
《Jole Dobe Na (Won’t Drown in Water)》(スティル), 2020
(c)Naeem Mohaiemen, Courtesy of the artist
《JOLE DOBE NA (Do not Drown in Water)》, 2020は終末期医療と人生の理想について探る作品。1組の男女の会話をメインに、スケールの大きなカメラワークが印象的です。
JVTA 過去にアート作品の翻訳のご経験はありますか?
内田貴子さん(以下、内田さん)4~5年ほど前に一度だけ恵比寿映像祭で展示作品の翻訳を担当させていただきました。短編集でとても理解に時間がかかったことを覚えています。美術館には年に数回、友人に誘われて行く程度です。非日常の空間に身を置く楽しさがありますよね。
※今年の展示作品より
ニック・ケイヴ
《回転する森》 2016
© Nick Cave, Courtesy of the artist and Jack Shainman Gallery
Photo by James Prinz
JVTA ドラマや映画と比べて難しかったのはどんな点ですか?
内田さん アート作品だけに抽象的な表現が多くて作品のメッセージがつかみにくく、また答え合わせができない点(作品に関するインタビューなどが見当たらなかったため)に苦労しました。自分の解釈で合っているのか? と不安で手が止まる場面が何度もありました。不安なままで進めると、解釈のふらつきが字幕にもそれが出てしまう感じがするので、週末などはあえて作業せず、時間を空けて通しで何度も見ることで作品への理解を深めました。
※今年の展示作品より
佐藤雅晴
《ガイコツ》 2018
© Estate of Masaharu Sato, Courtesy of KEN NAKAHASHI
JVTA 政治的、医療的な内容もありましたが、調べもので工夫したことがあれば教えてください。
内田さん 工夫といえるかわかりませんが…。とにかくどういう意図で作られた作品なのかを正確に理解したく、本作に関する監督のインタビュー記事など探すも見当たらず。どういう人物が撮った話なのかが分かれば作品を紐解くヒントになるかなと思い、監督の生い立ちなどのバックグラウンドや過去の作品群を調べました。これまでも彼のルーツであるバングラデシュをテーマにした作品を発表してきたことがわかり、今回の解釈の参考になりました。これはドラマやエンタメの翻訳ではやったことがないので、私なりの工夫と言えるかなと思います。
※今年の展示作品より
エヴァ・ファブレガス
《ポンピング》 2019
JVTA ご覧になる方へメッセージをお願いします。
内田さん とても静かで美しい作品です。登場人物が2人だけなのですが、この2人が丁寧に世界観を紡いでいく様は非常に見ごたえがあります。海外旅行もままならない昨今ですが、非日常の世界に浸ってリフレッシュできるいい機会になると思います。会場へぜひ足を運んでみて下さい。
ヨコハマトリエンナーレ2020「AFTERGLOW―光の破片をつかまえる」
会期:2020年7月17日(金)-10月11日(日)
毎週木曜日休場(7/23、8/13、10/8を除く)、開場日数78日
会場:横浜美術館、プロット48
詳細は公式サイトをご確認ください。
https://www.yokohamatriennale.jp