『ズートピア』公式本 JVTAが翻訳を担当
現在公開中のディズニー最新作『ズートピア』の公式アートブックの日本版「ジ・アート・オブ ズートピア」(ジェシカ・ジュリアス/著 徳間書店)の翻訳をJVTAが担当し、修了生8名(翻訳者7名、チェッカー1名)が手がけました。担当したMTC秋山剛史ディレクターによると、MTCでは最近、書籍翻訳やウェブ翻訳の仕事が増えているそう。秋山ディレクターにテキスト翻訳について、話を聞きました。
◆まず、この作品の特徴を教えてください。
この本は映画『ズートピア』の制作の裏側や背景を覗ける1冊です。さまざまな動物たちが暮らすズートピアという空間、その中に住んでいるキャクターや建物などの細かい設定が紹介されています。オールカラーのイラストと共に、監督やアートディレクターなど制作スタッフのコメントや撮影秘話などが満載。動物のリアルな毛並みを再現するための考察などもあり、翻訳者さんはみな楽しみながら取り組んでいました。ディズニー作品の読者は大人から子どもまで幅広いため、原文は比較的分かりやすい英文でしたが、日本語でも読みやすい表現を心がけました。キャラクターの解説などは割とやりやすいものの、アニメ制作に携わるスタッフのコメントは専門的な用語もあり、リサーチも必要でしたね。
◆翻訳作業この本ならではの苦労があったとか?
特徴的だったのは、イラストの中に手書きで書きこんである文字も全部日本語に訳したことですね。手書きの文字は画像と一体化しているため、こういった情報はクライアントからのテキストデータには含まれていませんでした。そのため、まず翻訳の前に、イラスト中の文字をタイプし、データにする作業が必要でした。ただ、手書きの文字が読みにくく、ネイティブに確認してもらったことも多くて、ビジュアルブックでありながらテキストが意外と多かったと思います。また、大変だったのはズートピア全体を解説する地図のページに、制作者が設定したキャラクターの特徴や建物、街の特徴などが細かい字でびっしりと書きこまれていたこと。手に取った方はぜひこうした細かい部分の訳文もじっくりと読んでいただきたいですね。
◆書籍やウェブサイトにも翻訳の需要があるんですね。
はい。最近、こうしたテキストの翻訳は増えていて、トライアルにはまだ合格していない皆さんも活躍しています。その分野に詳しい人や仕事での経験がある人、日本語表現が優れている人などに、翻訳を依頼します。ただし、『ズートピア』はディズニーという大きな作品で、新たなクライアントということもあり、今回はすでに映像翻訳者としてデビューしている皆さんにお願いしました。納品後、クライアントから第2弾の『ファインディング・ドリー』のアートブックの翻訳依頼があり、すでに納品しています。ちなみに第2弾ではディズニーに詳しく、ライターとして活躍中の方に総合チェックをお願いしました。今後もディズニー関連の書籍翻訳はありそうなので、さまざまな人たちにチャンスが広がりそうです。
「ジ・アート・オブ ズートピア」
ジェシカ・ジュリアス/著 発売/株式会社徳間書店 発行/株式会社CLASSIX MEDIA
2016年06月20日発売
http://classix.co.jp/zootopia
◆WEB翻訳はどんなサイトを手がけていますか?
僕が担当しているのは、イギリスで1952年から続く老舗音楽雑誌『NME』が運営する音楽サイト『NME.com』の日本版『NME Japan』(10名以上のチームが稼働)やリクルートのIT関連のブログ『POSTD(ポストディー)』(毎日更新、常時約15~20名が稼働)などです。ウェブサイトの翻訳は納期がタイトですが、書籍翻訳は比較的、作業時間に余裕があり、じっくり取り組めると思います。
NME Japan
http://nme-jp.com/
POSTD(ポストディー)
http://postd.cc/
◆WEB翻訳などレギュラーのチーム翻訳に取り組むと専門知識が増えそうですね。
例えば、ハーバード・ビジネス・レビュー(アメリカの経営学誌)では、IT系のビジネス記事の翻訳を定期的にJVTAが手がけていて、現在IT翻訳の経験のある翻訳者さん1人にお願いしています。翻訳者さんへのクライアントの信頼も厚く、翻訳者さんの指名で依頼がきています。書籍翻訳の場合も、こうして経験を積んできた人やトライアルで何度か次点になって頑張っている人などに声をかけることが多いですね。日ごろ、コツコツと経験を積んでいる人は心強いし、安心してお願いできますから。日本語版サイトの起ち上げの時や、チームの翻訳者の補充の時などには専用トライアルが行われるので、皆さんもぜひ挑戦してみてください。WEB翻訳で活躍された後に、トライアルに合格する人も多く、テキスト翻訳は、今後さまざまなジャンルの仕事に携われるチャンスです。
ハーバード・ビジネス・レビュー
http://www.dhbr.net/